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養生ということ(2)

養生ということ(2)

 平成6年の夏の話題の一つに、中国の運動選手のコーチが、冬虫夏草(とうちゅうかそう)などの漢方薬入りのスープを作り、それを飲んだ選手が世界記録などを打ち立てたとして新聞で報道されました。この記事を読んだ方は、やはりそういう秘密の食べ物などがあるのだと考えたかもしれません。中国は奥行きのある謎の大国ですから、いかにもありそうなことに思われます。
 
 しかし、これは眉唾ものだとわたくしは思います。何か特別なものを食べることで病気が治ったり元気が倍増するというのは、日常その食品の成分が欠乏している場合に限られます。白米ばかり食べていた江戸の人々を悩ませた脚気(かっけ)は、現在ビタミンB1の欠乏によって起こることがわかっています。
 
 しかし、この脚気は白米ばかりを食べるという、ぜいたく嗜好から生まれたことを忘れてはなりません。経済的に進んでいる国々では、病気の原因は栄養の欠乏よりも、栄養の過剰、つまり好物の食べすぎから起こることがはるかに多いのです。
 
 糖尿病や肥満はこの五十年間で著しく増加した疾患です。喘息やアトピー性皮膚炎も同様に増加しています。これらの病気が増加したのは、日本が経済的に豊かになり、食べ物が豊富にでまわるようになったことと軌を一にしています。
 
 中年以上の患者の皆さんが子供であったころ、友達にこれほど多くのアトピー性皮膚炎をみたことがあったでしようか。
 
 結論をいいますと、まず第一は、健康を保つために食事を取るという当たり前の原則を確認することです。食事の内容は好みで半分をえらぶことはやむを得ません。しかし、残り半分の食品は理性的に選ぶのがよいのです。そして、多種類の食品を片寄らず毎日少しずつ摂取するようにします。
 
 どうも夢のない話になりました。くだんの運動コーチの秘密スープは高く売れたそうです。日本の健康雑誌などが声高に報道している健康増進のやり方の背後には、金銭的な利益をうる仕掛人がいることもお忘れなく。
 
 新しい方法に飛びつく前に、新鮮なただの水で頭を冷やすことが必要なようです。
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