漢方薬が効くという根拠
漢方薬が効くという根拠
いま行われている医療が本当に有効なのかを検証する作業が世界中で進行しています。医療行為のなかには、一部の不整脈治療のように、かえって死亡率を上げてしまうものがあるということもわかってきました。よかれと思って施した医療行為で死亡率が上がってしまうのでは大きな問題です。
漢方治療の領域でも例外ではありません。日本の漢方医学の学術団体として最大の日本東洋医学会は、平成13年6月にEBM委員会(秋葉哲生委員長)という変わった名前の委員会を発足させました。EBMには「医療の根拠」というような意味があります。この委員会で漢方薬が効くという根拠を明らかにしようという目的です。
EBM委員会の10ヶ月にわたる活動の結果、833の漢方薬の有効性をしめす臨床研究が評価されました。その結果、わが国の漢方治療は科学的な評価基準に照らして有効であることがほとんどの科目で認められました。これは漢方医学に携わるものとしても大きな出来事でした。平成14年5月17日には、このような結果を、東京の赤坂プリンスホテルに約30のマスコミをお招きして発表しました。医学薬学専門の各紙にはその発表の様子が詳しく報道されています。(*院内に掲示があります)
この作業は昨年8月ごろから主に小生が中心となって行いました。そのために一年間は遊びに行く暇もないほど多忙を極めたのですが、いくつかの興味深い発見がありました。
これまで誰も気に留めなかった論文の中に大変に重要な研究があって、そのいくつかを明らかにできたことです。子宮筋腫や骨粗しょう症についての研究などがそれに当たります。骨粗しょう症は今後ますます重要性を増す病気ですし、子宮筋腫は女性の多くが悩んでいる病気です。漢方治療がこれらに有効であると判明したことは多くの方々に福音となり勇気を与えるでしょう。
最後に重要なことは、これらの研究成果はいずれもわが国の人々についての実際のデータであるということです。現在わが国で用いられている薬剤の臨床試験が、多くは外国のデータに依存していることを知る人は少ないでしょう。これは食品と同様にわが国の人々の安全を脅かしかねない問題なのです。