腹八分以外の食事養生
腹八分以外の食事養生
少し前、病原性大腸菌という耳慣れない名前が、新聞やテレビで取りざたされていた。科学技術が進んで、われわれの身辺がかつてとは比較にならぬほど安全かつ便利になったのに、まだ細菌の感染に苦しめられるのが止まないのであるから、その向こうにある癌や動脈硬化などの難病の克服はまだ遠い先のことであろう。
「腹八分に医者いらず」とは飽食をいましめた諺であるが、食べ物を通じて健康を達成するには、食べすぎないことのほかに、よい食品を選んで摂取するという視点を欠かすことができない。つまり、食品の量とともに質が重要なのである。今日のように、果物や甘味のお菓子などの過剰な食物群に取り囲まれていては、いかに節操頑固な人といえども、量的に質的に誤った食べ方に陥ってしまうのである。何年か前に母校の中学生にためになる話をして欲しいとの依頼があったので、『中学生諸君の食生活、10の誤り』と題して3、40分話をしたことがあった。その10項目とは、
- 朝食のとり方が少ない。
- 間食と夜食が多い。
- 糖分、脂肪が多い。
- インスタント食品、スナック食品が多い。
- 食物繊維が不足している。
- カルシウムが足りない。
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ビタミンB2が不足気味。
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肉、鶏肉が多く、魚が不足。
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塩分摂取が過剰である。
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偏食の人が多い。
であった。健康のために食品を摂取するという考えは、育ち盛りのかれらには念頭にないのであろう。
気管支喘息やアトピー性皮膚炎で悩む患者さんが来られると、当院ではつぎのような院長自作の養生歌を小さな紙片に印刷したものをお渡ししている。そこに、いわく、
おそるべしイヌ、ネコ、コトリダニ、ホコリ
チョコに、アイスにフライドチキン
漢方の専門家の集まるある学術集会でこれを披露したら、某有名教授から、是非教えて欲しいといわれて、さすがの筆者もたいへん恐縮したことがある。